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「バカ!大っ嫌い!」
そう言うと、
バシッ!
彼女は掌で僕の左頬を思いきりはたいて走り去る。
僕は、じんじんする左頬に手をやり、涙目で彼女の背中を見送った。
彼女は、そんなに高くない白いヒールを足に引っ掛けると、荒々しく玄関の扉を開けた。
そして、
「うわーん」
大きな泣き声を挙げて、勢いよく部屋の外へと飛び出して行った。
「ああ、いい......」
思わず声が漏れる。
言っておくが、僕はMではない。
否、今となっては、それもどうだか怪しい。
しかし、そんなことは、どうだっていい。
とにかく、今の僕は、彼女なしではいられなかった。
そう、心に渦巻く生々しい感情を、時として思い切りぶつけてくる、そんな彼女なしでは。
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