アンプ

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「ちょっと! ぼーっと突っ立ってるくらいならレジやってよ!」  二台だけ稼働しているレジには、どちらも行列ができていた。対する六台設置してあるセルフレジには、誰も使っていない台がある。監視のために立っている彰子へと、普通のレジに並んでいる客から罵倒が飛んできて、彰子は「すみません」と小さく謝り仕方なく空いているレジ台へと立つことにした。  状況から考えて仕方がないだろう。レジを開け「お待ちのお客さまはどうぞこちらへ」と声をかける。すると、列の後方に並んでいた客が、我先にと彰子のレジへと並びはじめた。 「お待たせしてすみません」  商品をレジに通しながら、へらりと笑ってみせる。客は三十代くらいの主婦で、無表情で彰子の手もとを眺めている。彰子は要領がいいほうではない。レジを通す際、重いものから先にというのが鉄則だが、カゴの中をパッと見ただけではすぐに判断がつかず、ついつい手がうろうろとしてしまう。
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