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二人は3連に並んだシャッターの中央にいた。シャッターは手動、オーバースライダー方式の上下開閉のものだった。天井にスライドして納まるタイプだ。
「いいか、ここを開けたら正面ゲートに向かいダッシュする。敷地内にいる赤は俺たちを見つけ次第追い掛けて来る。健常者よりは遅いがそれなりのスピードで走って来るぞ。追い付かれるまで気にせずゲートに向かって走れ」
「ハイッ」
「俺がゲートを開けるからその間に追い付いてきた赤を美希ちゃんが撃つんだ。足を撃っても奴らは痛みを感じないから切断されない限り追い掛けて来る。心臓か頭を狙え」
「ハイッ」
「トラックが中に入ったら俺がゲートを閉める。美希ちゃんは速攻で岡君に小銃を渡して一緒に応戦しながらトラックの助手席に乗るんだ。俺は荷台に飛び乗る。荷台の上から敷地内に入ってしまった赤を一人でも多く片付ける」
「ハイッ」
「シャッターは開けたままにしておくので車が入ったら速攻で俺が降りてシャッターを閉める。こんな段取りだ。質問はある?」
「大丈夫です」
「よし、コンスケからの無線を待とう」
「ハイッ」
一気に緊張が高まった。美希は菅原からの話を整理してイメージトレーニングを始めた。いつかやらなければならなかったこと。念願だった武器が大量に手に入る。これは仲間全員が待ち望んでいたことだった。
美希は薄暗い車庫内を行ったり来たりとグルグルと回る。菅原は腕を組んだままじっと無線連絡を待った。その間二人は無言だった。
5分ほど経過しただろうか、待望の連絡が来た。
『近藤や、着いたで! ヤバい状況や! メッチャ囲まれとる!!』
「え~?! 言ったじゃない、慎重にって!」
『慎重にやってもアカンわ! 一人が気が付くと皆来よるんや!』
その連絡は吉報とは言えなかった。
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