182人が本棚に入れています
本棚に追加
「どうするの? 菅原さん・・・!」
「やるっきゃないっしょ」
落ち着き払った菅原の表情は不気味にさえ見えた。いや、覚悟を決めた男の表情がこれなのかとも美希は思った。もう菅原を信じて付いて行くしかない状況だった。
「いいね美希ちゃん。シャッターを開けるよ」
「ハイ・・・!」
「20式のロックは解除して〝レ〟にしてある?」
「大丈夫です」
「岡君に渡す方も大丈夫?」
「大丈夫」
コクリと頷くと菅原はシャッターのロックを解除し、静かに腰高ほどまで上げた。しゃがみ込んで周囲を見渡すと言った。
「OKだ。今から向かうと無線で伝えて」
「コンちゃん、今からダッシュでそっちに行く。コンちゃんとダンナの銃も持ってるからね」
『了解! 気ぃ付けてな!』
それを確認すると菅原はシャッターを開け切って美希の背中をパンッと叩いた。「行くぞ!」その合図で二人はゲートに向かってダッシュを始めた。距離は約150~200mほどか。
「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ!」
しばらく進むと後ろを振り返る美希。4,5人の感染者が走って追い掛けて来ているのを確認した。
「菅原さん! 後ろから来ている!」
「何人だ?!」
「4,5人!」
「気にすんな! 走れ!」
感染者が追いつく様子は今のところない。しかし美希は気になって仕方がなく再び振り返ると、その人数は7,8人になっていた。
「増えている! 全部で8人くらい!」
「追いつかれたら撃つんだぞ! 頭か心臓だ!」
「ハイッ!」
弾倉を詰めたバックパックと約3kgの自動小銃2丁を背負っている状態は走り辛い上に疲れを倍増させていく。
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ!」
息が切れてきた頃、暗闇の先にゲートと近藤が運転する2tトラックが見えてきた。
「ヤベェな! とんでもない数だ!」
菅原には見えていた。横スライド式のゲート鉄柵の奥に群がる感染者が。
「何よあれ! ゲート開けたら大変なことになるわ!」
美希にもそれが見えた。その数はざっと見ても100人は下らない。徐々に異様な地響きのような感染者たちの呻き声と雄叫びが聞こえて来た。
最初のコメントを投稿しよう!