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美希は撃ち続けた。一人、また一人と感染者は崩れるように沈んでいく。がしかし、その音を聞いてさらに集まって来る。
(これでは切りがない・・・!)
後ろを振り返ると菅原は敷地内から向かって来た感染者をほぼ全員片付けた様子だった。
「菅原さん! どんどん集まって来ちゃう!」
「分かった、強行するしかないな!」
「ゲート開けるの?!」
「開ける! 美希ちゃんは速攻で荷台に乗ってくれ。作戦変更だ!」
「了解!」
菅原は運転席の近藤に向かってウィンドウを少し開けるようにジェスチャーで伝えた。感染者たちのうめき声で叫んでも聞こえる状況では無いのだ。
「コンスケ! ゲート開けるから美希ちゃんと俺が荷台に乗ったら正面の車庫まで飛ばしてくれ! シャッターは開いてる!」
「分かった!」
「美希ちゃんは俺の援護をしてくれ! トラックを撃つなよ!」
「ハイッ!」
そう言うと菅原はゲートの端まで走った。手動のロックを外すと、
「いいか~! 開けるぞ~!!」
と叫んだ。その合図に全員の表情が緊張を走らせた。トラックのエンジンが掛けられヘッドライトが点灯された。
菅原は満身の力でゲートを押す。鉄製のキャスターがスライドレールの上に金属音を響かせた。一度動き始めると勢いが付いて一気にゲートが開いた。と同時に通勤ラッシュの乗客が一度に全員降りたかのように感染者たちが敷地内に雪崩れ込んで来た。早速取り囲まれた無防備の状態の菅原。
〝ダダダダダダダダダッ!〟
その塊に向けて美希はライフルを乱射した。トラックの近藤は10mほど走らせて停車した。菅原はライフルを振り回し感染者たちを殴りつけながら叫んだ。
「美希ちゃんトラックまで走れ!」
夢中で走り出す美希を追って菅原も感染者を弾き飛ばしながら向かって来た。その二人とトラックを追い掛けて来る感染者たち。
「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ!」
美希がトラックの荷台に飛び乗るように上半身を滑り込ませると、ガシリと足首を掴まれた。
「キャーー!」
「俺だよ!」
菅原はその足首を持ち上げて美希を荷台に放り込むと、自らも飛び込んだ。それを見た感染者も荷台に乗ろうとしてくる。
「出せコンスケ!」
と叫び感染者を蹴り飛ばす菅原の合図と同時にトラックは走り出した。ガッタンガッタンと不安定な敷地内の芝生の上をそのまま真直ぐに進む。
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