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敷地内に残っていた感染者二人がトラックのライトに反応し向かって来る。敷地内の感染者は自衛官だった者がほとんどであり、迷彩ジャケットを着ていた。
「コンスケ! 気にすんな! 突進しろ!」
荷台の上から運転席側に聞こえるように菅原が怒鳴った。
〝ドゴン!〟と鈍い音を立てて二人の感染者を撥ね飛ばした。さらにその感染者の上を乗り上げてトラックは進む。その衝撃で車体が大きく揺れた。
「・・・!」
美希は後部で大の字に倒れてヒクヒクとしている死体を見た。その死体の上を100人以上に上る感染者たちが踏んで追い掛けて来る。美希がライフルを構えると、
「撃たなくていい。弾の無駄だ」
と菅原に止められた。
トラックは開いているシャッターに向かって飛び込んだ。急ブレーキを掛けて止まると菅原も美希も前にゴロンと転がされる。しかし菅原はすぐさま立ち上がって荷台から飛び降りるとシャッターへ走り、ロープを力一杯下へ引っ張り下ろす。〝ダーン〟とシャッターが下ろされると間髪入れずに施錠した。
「ハァ、ハァ・・・。お疲れ美希ちゃん、よくやった」
「菅原さんのおかげ」
ゴロンと床に横になる菅原を荷台の上から見下ろして美希が微笑む。
「いやぁ~、マジやばかったわ~」
勢いよくドアを開けると近藤が運転席から降り立った。次に静かに助手席ドアが開くとソロリと降りて来たのは美希の夫である岡 拓海だった。拓海は横になっている菅原に黙って近づくと怪訝な顔をして言った。
「菅原さん、妻にこんな危険なことをさせるなんて聞いていません。救命士として同行させたはずです。しかも銃を持たせるなんて・・・!」
ポカンとする菅原。
「いいのよタクちゃん! おかげでうまくいったでしょ? 私も勉強になったんだし結果オーライじゃん」
「何が結果オーライだよ。たまたま運が良かっただけだ」
拓海は相当に頭に来ていた様子だ。陽気な近藤もその空気に黙り込む。それを打ち消すように菅原は返した。
「運じゃねぇよ。美希ちゃんはセンスがある。本業の救命士より俺の援護の方が向いていると思ったくらいだぜ」
「何てことを、」
と拓海が言い掛けた時シャッターに衝撃音が響いた。追い掛けて来た感染者たちが一斉に叩き突いたようだった。全員に緊張が走った。
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