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3・脱出
「ヤバい! 壊れるんとちゃう?」
後退りをする近藤に菅原が背負っていたライフルを投げ渡す。美希もそれに倣って慌ててライフルを肩から外すと拓海に渡した。目を丸くする拓海。
「ロックは解除してあるから!」
「え? 撃つの?」
「こうに構えて。弾は30発。〝ア〟が安全ロック。〝タ〟が単発。〝レ〟に合わすと連射。衝撃は思うほどなくて撃ちやすいわ。連射にして頭か心臓だけを狙って!」
「あ、あぁ・・・」
瞬時にレクチャーする美希に菅原がニヤリとする。
聞いたこともないような呻き声と怒号が混ざった音。激しく揺れるシャッターの前で緊張してライフルを構える4人。シャッターは今にも破壊されそうな勢いだった。
「・・・・・・」
息を殺して身構えること数分。徐々に呻き声は遠ざかって行った。
「諦めたんやろか・・・?」
「諦めようなんていう思考が働くのかな?」
近藤と拓海の疑問に菅原と美希が返す。
「連中になってみないと分からねぇな」
「真っ白だと思うわ。ただ動くもの、光るもの、音がするものに反応してそこへ向かうだけなんじゃないの?」
どうやら感染者たちは散って行った様子だ。ただ敷地内に大量に入り込んでしまったのは事実。次はここからの脱出を考えなくてはならなかった。
「よし、各自ライトを持って地下へ下りる階段に向かってくれ。武器庫がある。必要なものは棚から下ろして床に並べておいた。それを全部トラックに積み込む。始めるぞ」
菅原の掛け声で積み込み作業を開始する4人。美希が先頭に立って案内をする形だ。
「地下1階よ。直ぐこの下だから距離は無いわ」
「この駐屯地に武器がゴッソリある情報はホンマやったんやな!」
「中に赤はいないだろうな」
「大丈夫だった」
武器庫の入口から灯りが漏れている。菅原と美希が出て来たままだった。
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