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「うわぁっあ!」「あぁっ!」
武器庫に入ると突然近藤と拓海が悲鳴を上げた。
「何だよこりゃあ。室内に赤がいたのか?!」
二人が見たのは山田の死体だった。激しく被弾し血が床に広がっていた。
「赤じゃないわ。黄色だった・・・」
「黄色? 黄色を撃ったのか? 意識はあっただろ?」
コクリと頷く美希を拓海は怪訝な目で直視する。
「彼は山田さん。ここを窃盗から死守していた」
菅原が説明を入れた。拓海は納得できず詰め寄る。
「そんな人を・・・。何か揉めたんですか? どうして撃ったんですか?」
「本人の希望だ。いずれにせよだった」
「だったら一発で済むでしょうに! こんなにも撃つ必要が?」
「あぁ、それは・・・」
拓海が言うことは正論だ。菅原は返答に困った。
「私が撃ったの。彼の死を確認してから、練習で撃ったの」
「美希が?」
「上の車庫で撃てばその音で集まっちゃうでしょ? ここは防火構造だから音漏れも無いじゃない。でも火気厳禁だから壁に撃って跳ね返って爆弾に被弾したら元も子もない。それで山田さんの背中に撃たせてもらったの・・・」
「・・・・・・」
美希の機転で拓海と菅原の衝突は避けられたが、拓海は二人に対し疑念を拭えなかった。健常者だった山田を菅原が射殺してこの武器庫を占拠したのだろうと思っているのだ。
どうやら菅原と拓海はお互いに性格上噛み合わない様子だった。生真面目な性分の拓海は少々強引な手段を取る菅原をよく思っていない。さらには妻である美希が菅原を擁護する場面に直面し、嫉妬に近い苛立ちを募らせていた。美希の説明は真実であったのだが、このシチュエーションではどう見ても武器庫の番をしていた山田を射殺したようにしか見えないのも事実だ。
「もうええやん、済んどることは。はよ仕事にかかろうや」
近藤の一言で作業に取り掛かった。
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