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近藤が車庫内でトラックの向きをシャッター前に向けた。シャッターを開けるのは菅原である。全員が乗り込んだのを確認する。
「コンスケ、シャッターが開いたと同時にエンジンを掛けろ。ライトも点けて構わない。いいか、3,2,1・・・」
シャッターを力一杯に持ち上げた菅原の目の前に感染者の顔があった。「うあっ!」と驚いて声を上げる菅原は咄嗟に蹴り飛ばした。ダッシュで荷台に向かい飛び乗る。
「出せ!」の合図でトラックは発進した。荷台の前頭部に背を付け膝を立てて座っている拓海に菅原が告げる。
「立たなくてもいい! 振り落とされんなよ!」
「了解・・・!」
立って荷台から前方を見る菅原を見上げている拓海。危なっかしくライフルを抱えるように握り締めている。
トラックは敷地内を30km/hほどのスピードで進んでいる。そのライトと音に感染者たちが一斉に集まって来るが、近藤は気にせずアクセルを踏み続ける。その間に音を立てて感染者たちがトラックに跳ね飛ばされるが、走行に支障が出るレベルでは無かった。
中には荷台のアオリを掴んで来る者もいたが、それを維持できず振り落とされていった。その都度拓海は感染者に向かって慌てて銃口を向けた。
「大丈夫だ。下手に撃たなくていい。ロケット弾が積んであるから危険だ」
「了解・・・」
万が一ロケット弾が被弾するようなことがあればトラックごと爆発してしまう。それに気が付くと拓海は益々ライフルを扱うことに恐怖を感じた。
『菅原さん! ゲート前すごい人数よ!』
すぐ目の前にいる美希から無線が入った。怒鳴らなくても会話が出来ると判断した美希に菅原は感心した。
「コンスケ、ライトを消せ! ギアをLOWにして押し倒して行くんだ!」
菅原も無線経由で近藤に指示をした。
ライトを消すと感染者たちはそれぞれが別の方向を向き始めた。
「やっぱり鳥目なんだな・・・」
ボソリと呟く菅原を拓海が見上げた。トラックはゲートに向かいLOWギアで突き進んでいく。ドカドカと感染者たちをなぎ倒して行ったが、それを物ともせずに感染者はトラック前方に再び集まり始めた。
「菅原さん!」
叫ぶ拓海の声に振り返ると減速したトラックの荷台に感染者たちがよじ登ろうとして来るのを確認した。
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