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「武器があったにしても車が1台もないわ。どうやって・・・」
二人は奥の官舎入口に向かって歩き始めた。美希はバックパックから懐中電灯を取り出すと足元を照らす。
「想定外だったな。ここがどんな状況だったのかは分からない。相当な混乱だったと思う。とりわけ自衛隊はほぼ壊滅だと思うよ」
「でも菅原さんみたいな人もいるんじゃないの?」
「まぁいるだろうけど俺みたいなのは稀だよ。俺の所属部隊は偵察隊っていうんだけどさ、本部含めて6小隊あるんだけど、俺以外には知っているだけで二人しかいなかった」
「その人たちはどこにいるのかなぁ」
「さぁね。もう流れ解散みたいな状況だったからな。各自残された時間を自衛官として恥ずかしくない行動と秩序を持って・・・なんて言われてなぁ。あの時点で秩序もクソもあるかってんの」
「・・・・・・」
美希は神妙な表情をして黙り込む。二人が官舎内に入るとそこはまず階段室になっていた。菅原を見上げる美希。
「武器庫があるなら地下だ」
と迷わず菅原は地下へ続く階段へ歩を進めた。
「気を付けて菅原さん、室内にまだいるかも」
「大丈夫だろ。いたとしても青だよ」
「まぁそうだけど、赤が紛れ込んでいるかもだよ」
「それなら大暴れしてあちこちに体をぶつけている音がするだろ?」
「まぁね・・・」
赤、青とは。一体何のことを二人は話しているのか。
地下1階まで下りると物々しい重厚な鉄扉が見えた。二人は顔を見合わせた。恐らく武器庫の扉であろうことは美希の目からも明らかだった。
「鍵は? 掛かっているの?」
コンテナの扉のような仕組みで縦に通されたパイプをレバーハンドルで連動し開けるものだった。そのハンドルと扉本体を南京錠で施錠する意外にも古い仕様であった。
「南京錠がない。開くよ、これ」
大きなハンドルを握り軽く上に上げ手前に引くと素直に開いた。がしかし、中から何かに引っ掛かり途中で止まってしまった。
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