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「この武器庫の死守は菅原1曹に託しました。俺はこれで任務完了・・・」
山田は真剣な眼差しで菅原を見上げた。
「え? どういうことですか?」
「自衛官としての任務を終えたい」
「はぁ・・・。それでも自分らはここを離れますが」
「だからその前に頼む」
「えっ?」
山田はもぞもぞと体を反転すると正座をして背筋を伸ばした。
「見られていては、やり辛いだろ」
「・・・・・・」
何を言わんとしているか理解した菅原。
「誰かが来たらお願いするつもりでいた。俺は外の奴らのようになりたくない。1曹にも迷惑を掛けたくない・・・」
「分かりました・・・」
菅原は山田の後頭部にライフルの銃口を向けた。美希は菅原に目を向けると静かに頷く。
「山田さん、ありがとうございました。任務、お疲れ様でした」
〝ダダン!〟
バタリと山田は床に顔を埋めた。
「自殺をしても良かったのに最期まで任務に忠実だったのね。グアムのジャングルで終戦後20数年も潜伏を続けた兵隊さんの話を思い出したわ・・・」
「それが日本人なんだよ。その忠誠心を利用された結果がこのありさまだ」
「私たちは日本人らしくなかったのかな・・・」
「いやそれは違う。自分の意思を持っていた。それだけだ・・・」
菅原は棚の武器を物色し始めた。美希もそれに続くが何をどう選んでいいのか分からない。独り言を言いながら銃器を選んで床に並べていく菅原を黙って見ていると菅原が指示を出した。
「美希ちゃん、コンスケ達に無線で連絡取って」
「あぁ、そうね」
まだ他に仲間がいるようだ。
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