侍女ハルラールは労災認定してもらいたい

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 王付き侍女の朝は早い、わけではありません。  私が仕える王・サヴィトリ様の起床時間はまちまちです。八時にご起床されることが多いのですが、寒い季節になるとなかなか布団を手放しません。  昨晩お休みになるときに「明日十時に起こして」と仰っていたので、今日はいつもより時間に余裕があります。  まずは部屋のカーテンを開けて朝日を浴びます。  くもりでした。一日くらい日光など浴びなくとも人間生きていけます。  次にベッドメイクをし……あら、枕カバーに抜け毛がたくさんついてしまっています。シルク製なので摩擦が少なく髪に負担がかからないはずなのですが。まぁ、こんな日もありますよね。  歯磨きと洗顔をした後、服を着替えて髪の毛を整えます。突然呼び出されることもあるので、食事よりも身だしなみを優先します。   ドレッサーの前に座り、髪をとかしていると、後頭部のあたりに違和感を覚えました。  探るように指を差し入れると、何かが指に重く絡みつきます。  何か嫌な予感がし、手を見てみると大量の抜け毛が絡まっていました。……いえ、髪が長いからたくさんあるように見えただけでしょう。  私は抜け毛をひとまとめにしてゴミ箱に捨て、ヘアブラシを手に取りました。  ……見なかったことにしたい。  私は言い訳できない量の髪が絡まったヘアブラシを投げ捨てるようにドレッサーに戻し、重い頭を抱えました。優雅にモーニングルーティンなどしている場合ではありません。  現状を正確に把握すべく手鏡を取り出しました。ドレッサーの鏡を見ながら、手鏡を後頭部にかざします。  …………ぅぁ゛ぁぁあ゛ぁぁ゛ぁ゛うぁ゛ぁあぁ゛ぁ゛ぁ。  声にならない叫びが喉を震わせました。  手から手鏡がするりと落ち、心臓を刺すような甲高い破砕音が響きます。  手鏡に映っていたのは、後頭部に満月のように浮かぶまんまるい円形のハゲでした。
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