〇桜川病院・階段踊り場

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〇桜川病院・階段踊り場

「ヘェイーックション!!」 階段ホールに漂う冷気のせいか埃のせいか、はたまた誰かが私の噂をしているせいなのか、とにかくいつもの私のくしゃみが出てしまい、その勢いで「あ~っ」と叫ぶ暇もなくバットに載せていた鉗子(カンシ)立てが宙を舞う。 まるでスローモーションで見ているようだけど、どうにもできない。 そのまま勢いよく床に落ち、グゥァッシャーンと派手な音とともに、セッシ(ピンセット)が踊り場一面に撒き散らされた。 「はぁ、もう……」 溜息と共にしゃがみ込み、散らばったセッシをかき集める。 着任早々こんなミスをして、誰かに見られたら恥ずかしすぎる、そう思いながら拾っていると、ふと、どこからか視線を感じて、見渡すとすぐに目が合った。濃紺のオペ着を着た、ちょっとカッコいい男の人と。 その大きく見開かれた目はすぐに床へと視線を変えた。
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