呪いの村〜序〜

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 ある村で18人が一夜にして惨殺される事件が起きた。  亡くなった18人は村の住民で全員70歳以上の高齢者であった。この村は限界集落であり、公共交通機関もなく、電気は通っているが、山間にあるため携帯電話の電波は非常に入りづらい村だった。  ある大雨の夜、一人の男性がこの村にやってきた。男性は道に迷ったと村人に伝えた。村人は男性を不憫に思い、自分の家に泊まって明るくなってから道を戻った方がいいと提案した。男性はその申し出をありがたく受けて、村人の家に世話になることにした。  夜中、雨粒が周囲の木々の葉にあたり跳ねる音、屋根を打つ音がうるさいくらいの雨になった。  用意されたまま、たたまれている布団の上に座る男性が持っていたリュックを背負い、腰を上げたのは日付が変わった頃だった。  古い家のため廊下を歩くたびに軋むが、その音すら雨音に消されてしまう。  男性は村人の寝室に近づいていく。静かにドアを開けると村人は布団の中で静かな寝息を立てていた。  男性はリュックから50センチほどの先の尖った金属の棒を取り出し、寝ている村人の顎下から脳に向けて一気に突き刺した。  衝撃に目を開けた村人は、そのまま眼球を上転させて命の火を消した。  男性はその後、雨に紛れて他の家にも忍び込み、次々と村人を突き刺し、殺していった。そして、雨が上がり朝をむかえる頃には、村には18体の脳を串刺しにされた死体が転がっていた。  このニュースは日本中を震撼させた。そして、程なくして男性は殺人の容疑で逮捕された。  取り調べで動機を聞かれた男性は逆にこう質問をした。 「あなたは、一人であの村に一泊できますか?」  警察官は、あんな事件があった村だから、何か起きそうで不気味だから泊まりたくない、と答えた。 「みんなそう思いますよね。あの村に行ったら呪われるかもしれないって。僕の目的はね、呪われた村を僕の手で作ることだったんですよ」  男性は満足そうな笑みを浮かべた。
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