ユージンの使命感

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「Vital point?」  ヴィクトルは右眼で福子を睨み、もう一方の手で股間を示して、「touch it」と嫌らしい笑みを浮かべ、首を切るジェスチャーをして福子から順番に指差す。 「急所の意味が通じた。触ってみろと挑発し、ケースを開ける事より、抹殺を優先する気だ。通訳は不要だと思うが、一番目は福子」 「でしょうね。女の子に怪我させられて、プライドが傷付いたんでしょ」 「福子。セクハラはともかく、黒服のガードは強固だぞ」  和也の意見を聞くまでもなく、福子は黒服の左胸にあるKGBの紋章と黒虫の蠢く生地を注視し、顔を顰めて視線を上げ、両腕で顔面をブロックして「kill from a girl」と宣言するヴィクトルに舌を出す。 「目を防げば、問題ないってか?」  福子は横に立つ和也に「アルミケースをお願い」と囁き、「福子。何分攻撃を続けられる?」と和也が小声で聞く。 「2分が限界かな〜」  福子は右に回り込む和也を援護するように、左にサイドステップして高速の右ジャブと蹴りでヴィクトルのガードを叩き、打っては離れる連続攻撃を仕掛け、左拳で右眼を突くフェイントを混ぜ込み、単発なヴィクトルの攻撃を軽く躱して翻弄するが、掴まれたら一瞬で勝負が決すると想定している。  しかもヴィクトルは抹殺の順番を守るつもりはなく、福子の攻撃をブロックしながら黒虫が発生する霊気を右拳に集積し、左眼の死角からアルミケースを手にした和也に振り向くと、右拳を大きく振りかぶり、強烈な一撃を叩き込んだ。
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