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 坂本和也は床下を背泳ぎの要領で移動して、待合室を出てロビーで戦っている大和拓郎と合流するつもりだったが、アルミケースが床下に引き込めず、右腕を伸ばして床上を引きずり、ヴィクトルが腰を屈めて満面の笑顔で覗き込む。 「are you playing?」(お遊びか?)  ヴィクトルの声が拡散して耳に響き、膜のフィルターでぼやけた視界に福子がギアを一段アップし、ヴィクトルの股関節を連打して更に股間の急所を蹴り上げるのが見えたが、腕時計の針が2分過ぎを示して福子の動きが止まる。 「くそっ、ダメだ」  福子は黒服で防御された部分を攻撃しても無駄な事はわかっていたが、和也を援護するには連続攻撃を仕掛けるしかなかった。  ヴィクトルはアルミケースを浮き餌にして、ビーンズの効力が薄れて和也が浮上するのを待ち、余裕でドアを通り抜けようとした時、福子の渾身の回し蹴りがヴィクトルの側頭部を襲う。 『福子……』  和也が振り返り、飛び蹴りがヒットしたと一瞬期待したが、すぐに溜息を漏らして床下から浮上し、待合室へ戻ってドアの内面から霊体を半分ほど露出させ、福子がジャンプした状態で足首を掴まれているのを茫然と眺めた。
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