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 ヴィクトルは右腕で蹴りをブロックして左手で福子の足首を掴まえると、床に叩き落として頭を叩き割り、霊魂が消滅するのをイメージして笑みを零す。しかし福子の狙いはヴィクトルの攻撃を誘い、油断した状態で接近する事にあった。  持ち上げられた反動を利用して、もう一方の自由な左足でヴィクトルの顔面へ蹴りを放ち、足首を直角に曲げて爪先で右眼を潰す。 「おらぁ〜、渾身の蹴り」  ガードした指の間から運動靴の爪先が右眼の窪みに食い込み、ヴィクトルが「ウグッ」と呻き、一歩二歩後退して仁王立ちになり、福子は肩を踏み台にして後方に回転し、両手を広げて着地した。 「流石、福子」  ドア面から観戦していた和也が歓喜してグッドサインを出すが、ヴィクトルは窪んだ右眼に三本指を差し込み、瞼をこじ開けて眼玉を露出させ、人差し指と親指で作った輪から視線を向け、睨まれた和也は「you too」と……アルミケースを抱えて後退する。 「つま先の食い込みが甘かったか?」  福子は運動靴ではなく裸足だったら潰せたのにと嘆き、和也の方へ走り出して一緒にドアを通り抜けるが、身を低くしたヴィクトルがダッシュして襲い掛かり、肩からドアにタックルしてアルミケースごと和也と福子を突き飛ばす。 「苦戦してるのか?」  ドミニカとバトルを繰り広げていた拓郎が、待合室のドアからロビーに転がる二人を見て攻撃の手を止め、ドミニカもアルミケースを拾い上げたヴィクトルを振り返り、「No good」と左眼を負傷している事に驚く。
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