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黒服の攻略
坂本和也はヴィクトルに胸ぐらを掴まれて宙吊りにされた数分前のシーンを思い返し、『盾になったユージンの霊体が粉々になって空中に飛び散り、その塵が黒服に付着して黒虫を弱らせたのでは?』と推測した。
「福子、急所蹴りのチャンスだぞ。ユージンの残魂が殺虫スプレーの役割をしている」
(和也の観察眼は正しく、ユージンはシェフチェンコがヴィクトルに抹殺されるのを目撃し、霊体の塵が黒服に損傷を与えると捉え、股間部に爪痕を残したのである。)
「マジ?でも、気持ち悪いんですけど」
黒虫は弱っているが踏み付けても潰れず、床を這い回る黒蚕の幼虫二匹とムカデ一匹を和也がピンセットで摘み、硝子瓶に捕獲した。(坂本和也は霊アイテム開発チームの一員であり、霊虫の捕獲道具を常備している。)
「福子。嫌なら相手を変えるか?」
「いえいえ、やりますよ。拓郎はマッチョガールとやりたいんでしょー」
「言い方に語弊があるな。お互い、手合わせした相手の方がやりやすい。坂本さんは時限装置の解除をお願いします」
アルミケースに仕掛けられた時限爆弾はダイヤルキーの誤作動と、敵に奪われた時を想定してタイムリミットが設定してあり、拓郎に指摘された和也は腕時計を見て確認し、「30分」と告知する。
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