霊波動の応用

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 ドミニカは5分で拓郎を再起不能にしてみせると宣言したが、4分と訂正して徐々に力を込めて右腕を折り、日本の工作員に絶望感を与えてからチョークスリーパーで抹殺し、ゆっくりと重要機器の爆発を観賞するつもりだった。 「4 minutes……」  和也がアルミケースのタイマー表示[27:02]を見て福子に「虫を切り殺せないか?」と囁き、福子は「多過ぎて無理。毒虫かもしれないしね」と断り、両者とも拓郎には見向きもせずに、右眼を細めて睨むヴィクトルの出方を伺っている。 「仲間はあなたを見捨て、時限装置を止める事に躍起になっている」 「いや、信頼だとしたら?」 「強がってないで、苦痛に泣き叫べ」  腕の骨がギシギシと軋むが拓郎は平然と応対し、ドミニカが激怒して関節を逆側に捻じ曲げたが、拓郎は左手の掌底(しょうてい)をその肘関節に当てて霊力を集中して衝撃波を打ち込んだ。 「What?」  右腕の内部に浸透した発力が細胞を粉砕し、空中に飛び散った塵がドミニカの黒服に降り掛かり、状態を起こした拓郎は空中に浮遊する塵を左手で集めて、床を這う黒ムカデの方に振り撒き、アルミケースへの道を空けて和也が駆け寄って確保した。 「これで形勢逆転。30分以内に時限装置を解除し、ユージンを殺したKGBを闇に葬る」  片腕を失いながらも立ち上がって、黒ムカデが戻る主人を睨んで宣言し、黒服の損傷部分を手で押さえたドミニカが首を傾げて呟く。 「無感覚な多重ゴーストがいると聞いた事があるけど、自分の腕を消滅させるとはね」  
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