ツーリングAIアプリ

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ツーリングAIアプリを手に入れた AIが自動でオススメのプランを提案してくれる優秀なアプリだ 天気や渋滞情報などを踏まえて最適なコースを考えてくれる しかも使えば使うほど、向かった場所や立ち寄ったレストランなど俺の好みを学習するためさらにより良いコースに進化する 今では週末の度にこのアプリを開いて自由気ままに小旅行だ さて今日はいったいどこへ行こう 先週は海沿いを走ったから、山奥のダムや神社がいいな それになんだかラーメンが食べたい気分だ そんなコースが出てくればいいなとアプリを開くと 「今日は外に出ず家にいましょう」 ……あれ?おかしいな いつもだったらオススメのコースが出るはずなのに、家にいなさいと表示されている 何回かアプリを再起動しても変わらない どうやら不具合が起きているようだ それなら久々に自分でコースを考えようか 地図を見ながら頭を悩ませる 最初はワクワクしながら笑顔で探していたが、次第に顔が険しく曇っていく あぁ あぁもうめんどくさい 思えばこのめんどくささから逃れるために、AIアプリに頼っていたのだ なんだか嫌になってしまった 俺の相棒が家にいなさいと言っているのだ 今までその導きに従っていたのだから、今日も逆らわず従おう それなら愛車のメンテナンスでもしようかな ふてくされた気持ちでガレージに向かった そういえば最近走ってばかりでメンテナンスなんてしてなかったな お気に入りの音楽をかけながら、汚れを落としたり油をさしていく そして丁寧に車体を撫でながらエンジンをかけた その瞬間何かおかしいと冷汗がふきでる 言葉にできない違和感が体を包む 音楽もエンジンも止めて一度息を整えた なんだろうこの気持ち悪さは 些細な異変も見逃さないように神経を研ぎ澄ませながら、再度エンジンをかけ直した その正体にはすぐに気がつく まずは音 いつもとは違う異音がする そして匂い かすかだが嗅ぎなれない異臭がする 間違いない これはエンジンが故障している 大慌てでバイク屋に駆け込んだ 「いやぁよく気づきましたね エンジンが故障していたのと、ブレーキのかかりも甘くなってましたよ このまま走っていたらもしかすると大事故になっていたかもしれませんね」 バイク屋の店員が笑いながら褒めるが冗談じゃない それでもどうにか一安心だ 万全の状態になった愛車を見ながら胸をなでおろす せっかく直ったんだし、少し乗り回してから帰ろう 郊外にある大きな本屋に行っちゃおうかな そんな事を考えながら愛車に跨る エンジンをかければいつも通りの快音が響く いや、心なしかいつもより気持ちの良い振動だ ウキウキと浮かれた気持ちでバイク屋を出ると 「――――ッ!!」 ブレーキ音が静寂をつんざく 何が起きたのか理解が出来ない 巨大な何かとぶつかって体が空へ吹っ飛ばされた そのまま踊るように回りながら固い道路へ叩きつけられる どうやらトラックにはねられたようだ 意識が朦朧として体の感覚が繋がらず気持ち悪い 視界も定まらず靄がかかったようにハッキリとしない 一緒に飛ばされたのか、目の前にスマホが転がっていた バリバリに割れた画面にはツーリングAIアプリが映っている 「今日は外に出ず家にいましょう」 そんな警告が輝いていた
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