303人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
私は「そうかな?」と思ったが。会社では面倒見が良くて、頼り甲斐があると言われていた元夫は不倫に走り、結局ダメになっただけに余計そう思うのだろうか?
成美さんは確かにオドオドするところがあるから、そう見られやすいが周りが困っていると、さり気なくサポートしてくれる。たださり気なく過ぎて気づかれにくい。
それに、たまたま私が気づいていただけだが。その飲み会がきっかけに会話が弾み交際をスタートさせた。と言ってもお互いに傷があるから慎重に。
ホワイトな交際期間を続けて1年後の12月。
クリスマスの日に彼はプロポーズをしてくれた。場所は素敵なホテルのレストランで。
「僕は、まだ頼りない部分はあるけど一華を一生かけて幸せにしたい。絶対に浮気はしないし、ちゃんと君を愛すると誓うから、けっ、結婚してほしい」
最後の部分だけ噛んでしまっていたが、一生懸命私の事を想って、言ってくれているのは伝わってくる。婚約指輪が入った箱を持ちながらも、両手はガタガタと小刻みに震えていた。そこが彼らしくて可愛いと思えてしまうのは、私も彼の事が好きなのだろう。
しかし再婚になるし、元夫の事があるので複雑な気持ちもあった。
「私……前の夫との間に子供がデキなかったって前に言ったけど、それでもいいの?」
自分は検査には問題はなかったが、デキにくい体質かもと思うと結婚に迷いが出てしまう。再婚して……本当にいいのだろうか? と。
すると成美さんは、結婚指輪をテーブルに置くと私の手を握ってきた。
「僕は子供がほしいから結婚するんじゃない。君と一緒に幸せになりたいんだ」
そう言って話す彼の目は真剣に前を向いていた。噓ではないようだ。
私は、もう一度結婚に夢を見ていいのかな?
不安はある。元夫に不倫をされたのは一生の傷だ。でも、私も幸せになりたい。
そう思ったら、どうしようもなく涙が溢れてきた。
「……はい。お願いします」
溢れ出るさまざまな感情を拭いながらも、私は彼からのプロポーズを受け入れた。
そして私は再婚した。彼は初婚だ。
式は二度目なので遠慮したが、記念撮影だけはすることに。二度目のウエディングドレスを着た時の感情は複雑ではあったが、嬉しくもあった。
結婚した誠司は「綺麗だ」と言って照れくさそうに笑ってくれた。
最初のコメントを投稿しよう!