5人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
通されたのは、家の地下にある薄暗い場所だった。
娘が手に持った松明で中を照らすと、異様な光景に息を飲んだ。
「まさか、私が食べたのは······」
私は自分が食べた物の正体を察すると、吐き気を覚え、その場に突っ伏した。
檻の中で飼育されていたのは、人間に見えた。
「この村に度々迷い込んでくる獣ですよ。とってもジューシーで耽美な味がするでしょ。一度口にしたら忘れられなくなる。あなたも、もうこの肉が欲しくて欲しくて堪らない筈。」
どうしたことだろう。いつの間にか吐き気は収まり、先程食べた肉の味を思うと、生唾が止まらない。
「私はあなたが気に入ったの。ずっとこの村で私と一緒に暮らしてくれるでしょ。」
娘は私を包み込むように抱き締めた。
もう私は、あの肉無しでは生きられない。この村から出ることは叶わない。そう悟った。
「この村の名前?この村の名前はねぇ。食人村。」
最初のコメントを投稿しよう!