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「やあ、アイちゃん。今日も死にそうな顔してるね!」
「うるさいよハル君。」
ハル君は草原にある木のふもとにあぐらをかいて座っていた。
妄想の世界の風景はいつもバラバラ。
今日は草原だったみたいだ。
私は足を伸ばしてハル君の横に座った。
今日は大学の講義の課題が難しすぎて妄想の世界に逃げてきた。
すなわち昼寝の時間に突入した。
脳みそフル回転した直後なのだから、そりゃあ死にそうな顔をしているだろう。
もっとも、それを好きな人に指摘されるのは乙女として傷つくものがあるが。
「で、今日は課題が難しかったから逃げてきたと。」
「大変だったねえ。」
「課題もたくさんあるし、アルバイトもあるし、追い詰められていただろう?」
「頑張ってるねえ。」
よしよし、と私の頭をなでてくれるハル君。
私がぐったりしている原因も
言ってほしい言葉も
やってほしいことも
私の妄想の世界の住人ならすべて読み取れるのだろう。
「……うん、頑張ってたんだけど、少し疲れちゃった。」
「そりゃあ『少し』じゃなくて『とても』疲れるだろうさ。アイちゃんは1つ1つのことを丁寧にするからね。小さい課題1つやるのに2時間はかけるし、アルバイトも目標金額を稼ぐためにシフト入れまくってるでしょ。」
「頑張ってるのは知ってるけど、無理しないの。」
「まあ決めるのはアイちゃんだから、僕は応援することしかできないんだけど……。」
しょんもりしているハル君。
とても好き。
私の頑張りを認めてくれるところも、心配しているのを伝えてくれるのも、応援してくれるのを「応援することしかできない」と控えめに思っているのも、
全部好き。
「……ハル君が応援してくれてるからもう少し頑張れる。」
「……ほんと?無理しちゃだめだよ?」
「わかってるよ。」
また来るね、と
私は妄想の世界で目を瞑り、現実へと戻った。
「……待ってるよ、アイちゃん。」
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