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お膳立ての神様と先輩の神様
「どう? 翔くんは告白した?」
お膳立ての神様に、上司である先輩の神様が訊いた。
「いや、まだなんですよ。彼は優しくて、いつも行ないが良いから色々とお膳立てしてあげてるんですけどね。陽菜ちゃんの好意に全然気づかないんですよ」
「ほう。両思いで、陽菜ちゃんがグイグイ接近してるというのに気づかないとは……何やってんだ、翔くんは!」
先輩の神様が声を荒げた。
「まあまあ」
「まあまあ、じゃないだろ! 翔くんは17年間、かなり頑張って生きてきて、結構なヘルプポイントが貯まってるんだよ! この前のミーティングで話したから覚えてるよな」
「はい、もちろん覚えています。翔くんが10000ヘルプポイントを達成したので最大限のお膳立てをしてヘルプしていこう、という結論になったんですよね」
「そうだ! わかっているなら、あらゆる手段を使って翔くんと陽菜ちゃんという運命の二人をサポートしていきなさい! 翔くんサイドから告白して二人が幸せになる段取りで進めてるんだから!」
ヒートアップしてきた先輩の神様が怒鳴る。
お膳立ての神様は「……はい」と言いながら翔くんと陽菜ちゃんに関する最新レポートをポケットから取り出して再確認のため読み直した。
すると、「あっ、マズいですね」と言い、ため息をついた。
「何だ? どうした?」
「これまで話していた内容は古い情報でした。忘れていたんですが、この前、ちょっと、お膳立てのミスをしてしまって……」
「お前、ミスったのか」
「はい」
「私もよくミスるから気にするな。で、そのミスが何なんだ?」
「手違いで、世界トップレベルのイケメンを翔くんの通う高校に転校させてしまったんです。しかも、翔くんと陽菜ちゃんと同じクラスになってしまって。それで、イケメンを見た瞬間に、陽菜ちゃんの心がキュンキュンしてしまったらしく……色々あって、陽菜ちゃんとイケメンが付き合っているらしいんです」
「それは重大なミスだな」
「うーん。こうなったら」
「どうするつもりだ?」
「翔くんの頑張りを、なかったことにして全体のバランスを保つしかないですよね」
「現実から目を背けるんじゃない! お膳立ての神様よ人間になーれ!」
先輩の神様が指をパチンと鳴らした。
「あ、あれ? 人間になってる! 高校生くらいの女性の姿に!」
「ほれ、やるべき事はわかってるな?」
「……ええー! あんまりですよー! 翔くん、私の好きなタイプじゃないしー!」
「いいから、行けぃ! 責任を取って、陽菜ちゃんの代わりに君と翔くんが運命の二人となるのだ! 戸籍とか家族とか、諸々の手配は上手い具合にやっておくから! あと、今の記憶を消す!」
「えっ、記憶! 嫌だー! 嫌だー!」
「では、頑張れ!」
と、そこで先輩の神様が指をパチンと鳴らすと、元お膳立ての神様は地上へ飛ばされた。
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