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「うそぉ!」  成仏の道を探して普通に歩いていた幽霊だって、いきなり肉体を身に(まと)ったらびっくりすると思う。  手を上げてみると、桜色の爪の色白な手が見えた。袖にふわふわのレースがついている。座っていた椅子から立ち上がって、下を見下ろしてみると可愛い白いドレス――おとぎ話とか海外の王侯貴族の肖像画にありそうな衣装が見えて、私は慌てた。 「ここはどこ!?」  見慣れない部屋だった。壁にタペストリーが飾られている。窓の外に見える景色は空。さっきまで昼日中だったのに、なぜか夕方になっている。断じて実家の自室ではない。  部屋の隅に鏡台があったので、カバーの布地をめくり、私は鏡で自分自身の顔を見てみた。  写りが悪い中、初めて見る美少女――銀色の髪に淡い紫色の瞳――を見て、私はパニックになった。 「私は誰!?」 『うるせーなぁ! また増やしたのか』  耳元で野太い男性の声が聞こえ、私はさらに恐慌状態になった。 「あなた、誰ー!?」 『落ち着け。一から説明してやるから』  声だけの存在の彼――ベルナルドは、私達が憑依することになった巫女『ルーナ』のことを教えてくれた。
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