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AIは寝室のパネルを通してあの時身に付けた声でマスターを呼び掛けた。
『「マスター、マスターただいま戻りました。お加減は大丈夫ですか?」』
その声を聞いた老人は彼女の質問に答えようとしたけど喉が何かが引っ掛かっているのか上手く声が出せないでいた。
でもかろうじてだけど声が掠れた声で話しかけてきた。
「…………ああ、ミレイ……」
ミレイ
その時、AIの中でその名前が自身の個人名称として登録してしまった。
「『そうです。ミレイですよ。それでお加減は?』」
そう聞くと、マスターは何度か咳き込んでから何やら決意を秘めて優しそうな表情を見せていた。
「…………ううん……今は… 調子は……よくない……かな……」
「『マスター何処か悪いのですか!?』」と言いながら自身を投影させるものはないかパネルのカメラで捜してみたけどリビング以外にプロジェクターがないことを知り、それで慌てて今いるパネルのカメラ機能を少しだけハッキングさせてから投影できるようにしてマスターの前に姿を現した。
するとAIの姿を見たからなのかマスターの表情が何処か泣きそうな表情を浮かべていた。
「ああ……どうやら……天使様が訪れたようだ……」
『天使って何ですか?』
けれど、その質問に答えずマスターはぽつりぽつりと言葉を漏らした。
「ミレイ……に……そっくりな天使様が来てくれるなんて私は………なんて………幸福なんだ………」
すると、マスターはそれだけ言って彼はゆっくりと目を閉じながら最期にこう言った。
「いまから……いくからね………ミレイ……」
『マスター?』
『スキャニング開始します』
ピ…ピ……
ビービービー!!
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