一、悪い鬼・1

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一、悪い鬼・1

 あるところに、鬼がいました。  その力は千人力、その足は千里を駆け、その体は(いわお)のようでした。  鬼は人の世で暴れまわりました。人を襲い、人から奪い、人を殺しました。どれだけ奪いどれだけ殺しても悪びれることはなく、思うがままに蹂躙しました。  その強さは人が太刀打ちできるものではありません。事態を重く見た天上は討伐するために神使が遣わしましたが、それすらも鬼は返り討ちにしました。  鬼はますます増長し、暴虐の限りを尽くしました。恐怖した人々は、神に助けを求めました。  ついに神が動きました。  さすがの鬼も、神には敵いません。たちまち敗れ、高手小手に縛り上げられると、天上に連れていかれました。  死を覚悟した鬼は、殺せと言ったきり何も言いません。  神は言いました。 「殺しはしません。代わりに役目を与えます。(まっと)うし、償いなさい」
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