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とっさに身構えた少年の前に、青年はいた。
傷ついた革鎧になめし皮のマント。ベルトに差した古びた剣の他は、これといった装備もない。よく見られる冒険者や旅人のような風貌だったが、ただひとつ、首にぐるりとはめられた金色の輪が目を引いた。ネックレスのような装飾品ではない、まさに首輪といった感じの無骨な輪っかを、青年は身に着けていた。
そんな青年は何をするでもなくただ立っているだけで、敵意も悪意もなかったが、
「な、なんだよアンタは」
少年は警戒感をあらわにして問い質した。
その問いに、青年は頭をがりがりと掻きながら答える。
「あのなぁ、最初に質問したのは俺なんだから答えてから質問しろよ」
道理といえば道理の青年の答えに、少年は反発する。
「こ、この洞窟に用があってきたんだ! ほら、答えたぞ。今度はアンタが答えろよ」
すると青年は、ふーんと興味なさげな返事をして、答えた。
「俺はニオ。ここに住んでる」
「ここに?」
「そこ」
青年――ニオが傍らを指差す。
指差す先を少年がたどると、洞窟に入ってすぐのところに横穴があるのを見つけた。そこに青年の物らしき様々な道具が雑多に置かれている。壁には藁でできた蓑が、床にはあちこち破れた筵が、真ん中で燃えているたき火には蓋をされた鉄鍋があった。理由はわからないが、ニオはここで暮らしているようだ。
だとすれば、この洞窟についても知っているかもしれない。
「なあ、アンタ」
「ニオだっつったろ」
「ニ、ニオ」
「なんだよ」
「この洞窟のこと知ってるか?」
「もうちょっと具体的に聞けよ。知ってることもあるし知らないこともあるんだから」
確かにそうだと思った少年は、改めてニオに問う。そもそも知りたいことはひとつしかない。
「この洞窟のどこかに神殺しの剣があるって本当か?」
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