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さよならを告げて
あれから数日が経った、ある日の深夜2時。
いつものように、お決まりの廃工場で彼らは集まっていた。
「暑そうですねぇ~」
『はやぶさ』がニコニコと笑顔で言った。
「うちの人、冷房ガンガンに付けてますよ。設定温度見るだけで、幽霊の私の方が震えちゃう」
「お! 今のうちの人っていうの、なんか夫婦みたいだねぇ」
ニヤッとして『住職』が言うと『ロング』が慌てて否定する。
「や、やめてよ! そういうつもりじゃないから!」
パキッと音がして、3人が音の方を振り返る。
「こんばんは、みなさん」
『メガネ』がにっこりと笑顔で現れた。
足元には白い猫が嬉しそうにまとわり付いている。
「おや、シロちゃんも来たのかい」
孫をあやすように『住職』がシロと呼んだ猫を撫でる。
「善治郎は?」「善治郎は?」
『ロング』と『はやぶさ』が同時に聞いた。
お互い顔を見合わせ、あははと笑う。
「彼は、いっちゃいました」
少しだけ寂しそうに、でも笑顔で『メガネ』は答えた。
「どこに?」「どこに?」
またも二人がかぶる。
『ロング』が笑って『はやぶさ』の腕を軽くはたいた。
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