ある日の深夜2時

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『住職』と言われた農作業風の男が「いやいや」と手を振る。 「10年なんてね、若い方だわ。はやぶささんなんて20年でしょう? すごいねぇ」 『はやぶさ』は、照れるように頭に手を置くと、ふと(ひら)けた工場の入口に目をやった。 「今日…メガネさん遅いですか? 来ませんね」 『ロング』と『住職』も少し心配そうに見る。 「そうですねぇ〜、もしかして…」 「えっ、まさか…」 噂をすればなんとやらで、暗がりの向こうから、ぼんやりと白く人影が見えた。 大きめのふっくらとした白い影の後ろから、もう一つの人影が現れる。 「いや〜、すみません。遅くなりました」 『メガネ』と呼ばれた優しげな雰囲気の男が、ペコペコとお辞儀をしながら、入ってきた。 その後ろを物静かに、学生服の少年がついて来る。 「おや? メガネさん、その子は…」 『はやぶさ』に言われて、後ろを振り返る。 「彼とは途中で会いましてね。なんでも3日前から彷徨ってたらしくて…」 前髪が目にかかるほどに伸びた少年は、何も言わず会釈をした。 「じゃあ…新入りくんもいることですし、まずは自己紹介でもしましょうか」 両手ををパチンと胸の前で鳴らし『ロング』は自己紹介を始めた。
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