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彼らにとって、一番身近で狩りやすい肉は人肉。
理性のなくなった感染者達は自分の近くに居る人間達を片っ端から喰らい始めた。
よく見るゾンビ映画の様に、冥病は感染者の体液が身体に入り込むと感染リスクが大きく高まる。
噛まれた者が感染し、感染した者がまた人間を喰らい、感染し……のトンデモ無限ループによって、あっという間に日本は壊滅へと向かっていった。
国の力をもってしてもこの凶悪な感染病に打ち勝つ事は出来ずに、警察や自衛隊は機能不全状態。
発生源である日本は完全に他国から見捨てられ、最早終末寸前……というところで、国がたった一つの対策を打った。
生存者達を各都市部の郊外に集め、そこを大型のシェルターとして感染者が侵入しない体制を整えたのだ。
東京都内だと俺が今いる〝夜々町〟がその対象。
ーーただ、緊急で急遽作り上げた国の施作には様々な穴がある。
偶に一人二人、どういう訳だか平和を築いていこうとする町に感染者が現れることが屡々あった。
「……いやいや、まさか。」
俺はこの郊外に入ってから一ヶ月、感染者は見ていない。
自分の両親や友達がゾンビになった瞬間は見ちまったけど……それはシェルターに入る前の話。
シェルターに入ってからは、都市部でゾンビに襲われていた俺を助けてくれた薬大学生のお兄さんである亜貴と恋人になって、シェルター生活を少しずつ謳歌し始めていたところ。
亜貴は最初、俺の事を女と勘違いして声を掛けてきた。
……それ自体は良くある事で。
俺はとある事情で見た目が女寄り。
伸ばした黒髪も耳に掛かるくらいで、肌も焼けた事がない真っ白い肌に大きな目、長い睫毛。
よく女と間違えられて声を掛けられるし、カミングアウトした途端にキレられて気持ち悪いなんて罵られたりもするけど、亜貴は俺が男だって分かってからも「性別なんて関係ない。君が好きなんだから。」と優しく包み込んでくれた。
元々同性愛者じゃなかったけど、俺は俺で失われた高校生活の青春を取り戻そうとしてコロッと告白に即オッケーの返事をしてしまった。
……でも実際、亜貴は凄く格好良い。
身長だって190cmあって、清潔感のある艶々した黒髪、整った目鼻立ち。
前の話を聞いてみたら、大学生をしつつ芸能活動を齧っていたらしかった。
セックスだって凄く上手い。
男も女も未経験だった俺でも分かる、亜貴のセックスはめちゃくちゃ上手くて気持ち良い。
シェルター内のアパートで一緒に生活している内に、俺はすっかりのめり込んでしまっていた。
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