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か、噛まれた……!?
何が何だか分からなくて、首が物凄く痛くて、恋人が怖くて、頭の中が真っ白になっていく。
でも、ゾンビになった人に噛まれたら……!!
「はなしてっ……!」
パニックになりながら、俺は渾身の力を振り絞って亜貴の胸板を押す。
亜貴はよろめいて、床にへたり込んだ。
「ア゛ァ゛……」
「来ないで!!」
それでもまだ俺を血走った目で捉えては、立ち上がろうとしてくる。
怖い、怖い、怖い……!!
「や、だ……!!」
俺は痛む首を抑えて、慌てて駆け出した。
掌にはぬるついた血が大量に付着する感覚が広がる。
死にたくない……!
運動神経は良くないけど、俺の中にある生存本能が必死に両足を動かした。
バタバタと大きな足音を立てて、俺は玄関に向かって疾走する。
痛い、怖い、痛い痛い痛い……!
まだ死にたくない、絶対死にたくない……!
後ろからもバタバタと大きな足音が聞こえてきた。
追いかけてきてる……!!
「誰か……!」
玄関から靴も履かずに飛び出して、裸足でアパートの階段を駆け降りた。
「助けてください!ゾンビが……!!」
他の住人に助けを求めて思いっきり声を張るが、どの扉も開かない。
開けたら自分も巻き込まれる。
そんな状態で誰が赤の他人を助けてくれるっていうんだ。
……確か、こんな時は火事だ!って叫ぶのが良いんだっけ。今更言い換えても遅いか。
「はっ、はっ……!誰、か……!」
やばい、普段こんなに走る事なんて無いから体力がーー。
息が苦しい。横っ腹痛い。キツい。転びそう。痛い痛い痛い痛い!!
「死にたくない……!やだ……!!」
瞳に涙が浮かんで熱くなっていく。鼻水も出て、汗も額に滲んで、自分がぐちゃぐちゃになっていく感覚が分かった。
死ぬの……!?
俺、まだ高校二年生だぞ……!?
こんな世界でだって、これからやりたい事が山程あるのに……!!
なんで、なんでこんな……!
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