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ーーあ、足が、
「あっ!!」
走り慣れていない脚が絡れて、俺は一気に体のバランスを失う。
死……
こんな、こんなところで……!?
俺の人生、終わっちゃうのか……!?
頭のおかしい親に小さい時から女の子として育てられた所為で小学校の時は男のクセに女の子みたいだっていじめられて、中学校でも心無い噂のせいで友達が出来なくて、高校生で住んでる国が滅びかけて、挙げ句の果てにはゾンビになった恋人に…………
俺の人生、何だったんだよ!
押し付けられたピンク色のリボン。無理矢理着させられたピンク色の園児服。母親の歪んだ笑顔。父親の無関心な後ろ姿。落書きされた机。ゴミ箱に捨てられた上履き。精子の掛けられた体操着。ゾンビになった母親の笑顔。父親の肉塊。俺を見ている亜貴の笑顔。……綺麗。
ーー走馬灯が、頭を過ぎる。
何だ、俺の人生で一番綺麗な思い出に殺されそうになってるのか。
毒の塊みたいな異常者の母親でもなく、いつも助けてくれなかった冷徹な父親でもなく。
あんなに優しくて、あったかい人に。
まだ、マシな死に方……?
「ねえ……!!」
ふっと意識が飛びそうになった瞬間、物凄い力で腕を引っ張られる。
「うわ!?」
ふと視線を向けると、大きく目を見開いた金髪の男の人が部屋の扉を開けて俺の腕を引いていた。
「こっち!」
男の人は腕を千切りそうな勢いで引き、俺の体は物凄い勢いで部屋の中へ引き込まれる。
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