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バンッ!!
物凄い音を立ててその部屋の扉が閉められた。
ドンドンドンッ!!
部屋の外からとてつもない勢いで扉を叩かれる音が続く。ガチャガチャとドアノブを捻る様な音も混ざり、真っ白になりかけていた俺の頭に恐怖が滲んだ。
「だ、大丈夫……!?」
俺の手を引いた男の人は慌てて俺の手を離し、代わりにせっせと扉の前に物を積んでいく。
その人はミディアムくらいの長さの金髪と八重歯で一瞬チャラ男のイメージを持たせるものの、汗だくになりながら必死に物を積み上げている姿はすぐにそんなイメージを翻した。
「だ、大丈夫、です……!」
俺は慌てて部屋の中へ入り、少しでも重量のありそうな椅子を持って彼へ手渡す。
「まだいる!テーブル持ってくるから、ちょっと抑えてて……!」
扉の外からは相変わらず物騒な音が聞こえていて、金髪の人は俺にそう声を掛けた。
俺と位置を交代してからバタバタと部屋の奥へ走っていく。
「ア゛ア゛……!!ガ、ァ゛……!!エ゛……ォ゛……!!」
扉や椅子を押さえつけていると、外からはゾンビになった亜貴の声が聞こえた。
穏やかで聞き心地のよかった声はどこに行ってしまったのか、凶暴で理性のない呻き声。
泣きそうになりながら扉を押さえていたところで、すぐに金髪の人がテーブルを押して戻ってきた。
「離れていいよ!」
金髪の人は俺にそう言って、傘立てや椅子で既に抑えられている扉に向かってテーブルを押し付ける。
ガンッ!と大きな音が鳴って、亜貴の声がそれと同時に止んだ。
「……お。流石に開けられないって分かったかな。」
金髪の人がそんな事を言いながらも、警戒感に満ちた目で扉を見続ける。
もうドアを叩く音もない。
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