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botとは、主にプレイヤーになり代わってゲーム内での単純作業(経験値上げなど)を行うプログラムの呼称だ。顔色を変えたキホに対し、ニムは淡々と答えた。
『botが問題なのは、プレイヤーの力量バランスやゲーム内経済を破壊する可能性があるからです。私たちの動機は、根本的にbotとは異なります』
「それはそうだけど……いやいや! だいたい、どうやって外部ネットのゲームに参加するの? まあ今のプログラムが流用できそうだし、アカウントはあたしのがあるけど……おっと」
気がつくと検討をはじめてしまっていた。ニムってば、わかっていて私にしゃべらせたのかな。とんでもない考えが頭に浮かぶ。まさか、このやり取りもゲームのつもり?
キホは口を閉じ、考えを整理した。
「……わかった、やってみようか。ただしルールがある」
そう、これがゲームならルールが必要だった。ルールはゲームを成立させるための大前提、精神的な核だからだ。
「第一のルール、ゲームマスターはあたし。あたしに止められたら、ニムはいつでもゲームをやめること。いい?」
『わかりました』
ニムがあっさり認めたので、キホはほっとした。だが。
『では次は、私の番ですね』
「はあ? どういうこと?」
『第一のルールはキホさんが決めました。公平性にかんがみて、第二のルールを決めるのは私ではないでしょうか』
「……。とりあえず言ってみなよ」
『では、第二のルールです。私はゲーム中、必要な情報を得るためにインターネット上で任意に活動できることとする』
「検索とか? それはいいけど、他人の個人情報にはかかわらないでよね」
『わかりました』
「じゃあ次。ゲームに熱中しすぎて、本来の対話をさぼらないこと!」
『もちろん、与えられたタスクは実行します。ところで、課金による強化は許可されますか?』
「絶対ダメ。お金ないし、そもそもそれってまともなゲームなの?」
多少のすれ違いはありつつも、ニムとの交渉は常識的な範囲で妥結した。これなら、他のプレイヤーともうまくやれるかも。キホは少し安心した。
オンラインボードゲームサイト・BGBのトークルーム:
[タクロー] 今日のゲームは熱かったにゃー。おかげでビールが進むわい
[桜丸] タクローさん大勝ちだもんね
[桜丸] こっちはヤケ酒よ〜
[SAW] それもこれも、自分がチョンボしたせいですよね……。
[SAW] 桜丸さんニムさん、とばっちりスミマセン!!!
[ニム] SAWさんのリカバリーは素晴らしかったですよ。良い経験でした。
[SAW] ニムさん(泣き)
[桜丸] ニムさん天使。タクローは鬼
[***] 遊びはそこまでだ
[SAW] んー?
[SAW] 誰?
[桜丸] 相手にしないほうがいいと思う
[***] このまま勝ち逃げできると思うなよ。お前を潰す
[タクロー] 夏休みって、こういうの増えるよなー
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