お姫様 と 騎士 のお話

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お姫様 と 騎士 のお話

〖一話〗 遠い昔 ある国にお姫様がおりました。王様とお妃様も一緒におられました。 ある日、お姫様は騎士に恋をしました。 その国のお姫様はまだ幼い王女、 騎士はまだ見習いの少年でした。 騎士の見習いの仕事のほとんどが雑用でした。 洗濯物は毎日 山のようにあり、その上 剣の立ち合いの怪我の手当て、 その合間に近くの丘に薬草を摘む籠に入れる。 遠くの小川から澄んだ清らかな水を木の水桶で運ぶ。 一日中休む暇さえなかった ‥‥。 〖二話〗 そんなある日‥‥。 いつものような一日が始まるはずだった‥‥が?  騎士の見習いの少年の前に 夢のような出来事が起きる。 その国の王女様が、少年の目の前に現れて??? 「あの、あなたのご迷惑でなければ 好きになってよろしいでしょうか?」 愛らしい王女は、高級な布地のドレスを着ていた。靴は見たこともない仕立ての革だった。 「‥‥。えっ? はいっ?」 少年は何のことか分からなかった‥‥ (これは夢だ‥‥。現実ではない あり得ないことだ‥‥) 少年は 今起きた出来事を否定した。 〖三話〗 「あの‥‥。ご迷惑のようですね? どうかお忘れ下さい‥‥」 愛らしい王女は 顔を少し赤くするとその場から去るつもりでいた。 「お、お待ちください 王女様。 何かの夢を見ているような気がするのです。」 少年は慌てて 王女を止めた。 (王女様に ご挨拶しなければ いけない‥‥。忘れていた。) 〖四話〗 少年は王女様に 地面に片膝を付くと、片手を胸に置き頭を下げる。 「失礼いたしました、王女様。 騎士の見習いをしております。 ご挨拶が遅れて申し訳ありませんでした。」 (‥‥王女様へのご挨拶は これで良かったのだろうか?) 少年は少し不安だった。 〖五話〗 「どうかお顔を上げて下さい。 あのようなことを申し上げた、私が良くないのです。」 王女は悲しそうにして下を向いた。 (王女様を悲しませてしまった。 どのようにお伝えすればよいのか‥‥。) 少年は王女の愛らしさを好きになっていた。 少年の目の前に居るのは この城の王女様。自分はただの騎士の見習い。 二人の身分の違いは良く分かっている。 王女様は自分などは 手の届かない、遠い所に居るはずの方だった。 〖六話〗 「あの‥‥その‥‥えーと、ですね。 自分はまだ見習いで、知識もなく礼儀すら学んではいないのです。 自分は王女様の、お話し相手にすらならないと思っています。」 王女様に出会えたことも夢のようで、その上にこうして話をするなど信じられないことだ。 「あの、私 失礼ながら城の窓から見てました。 あなたがとても真面目に休むことなく仕事をしている姿。 王女という立場では してはいけないことでした。」 王女は少年の目を真っ直ぐ見つめて、それが噓や偽りではないことを伝える。 〖七話〗 (王女様は噓などいう方ではない。  自分は、ただ仕事を早く終わらせようとしていた‥‥。やるべきことが多くて忙しかっただけなのだ。) 「城の窓から見ているとは知らない人は‥‥。  自分の目の前に誰か居る時は真面目で、居ないと分かると怠けていました。 でも、あなたは違っていたのです。」 「それで、自分に興味を持った‥‥。ということでしょうか?」 少年は少し複雑だった。 〖八話〗 王女は困っていた。  (何をお話ししても失礼なことになるわ‥‥) 少年も困っていた。 (身分の高い王女様に失礼ではないのか‥‥?) 沈黙の時間が二人には長い時間だった‥‥ 少年は意を決して王女様に話し掛ける。 「あの、王女様。 失礼なこととは思いますが‥‥。 『王女様のお話し相手』というのはいかがですか‥‥?」 〖九話〗 「‥‥。あの、私の話し相手になって頂けるのですか‥‥?」 王女の表情が明るくなった。 「はい‥‥。自分で良ければですけれど‥‥いかがでしょうか?」 少年は王女の様子を見て安心をした。 「それは嬉しいです。 私とお話しして頂くだけで、気持ちが明るくなりますわ。」 王女は喜んでいた。 少年はその時は気付かなかった、それが二人の長い物語になるとは‥‥            
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