1987年 韓国、ソウル

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 特徴的な翠色の両眼に、小さな顔を輪郭(りんかく)づくる長い黒髪、遠目からでもひときわめだつ輝くような真っ白い素肌。かわいらしい黄色いチョゴリと真紅のチマ──と特別仕様(オーダーメイド)の衣装を身にまとわせてはいるものの、あれはオフィーリアにまちがいない。 「失礼、こういう者ですが」  うれしくてつい後先あまり考えず、韓国語で話しかけていた。 「金城(クムソン)……(さん)ですか」  オフィーリアをいっしょに連れていた、グループ数人のなかの学生らしき女性のひとりが、名刺を差しだされたままに受けとりつつも、けげんそうにつぶやいた。 「ああ、そうですね。ここではクムソンと申します。フリーのジャーナリストでして」  オフィーリアの笑顔につられ、口もとを緩めたまま金城は自己紹介する。 「民主主義のために立ちあがり戦っていると聞いて、ただちに取材に、というより正直なところ本音は、応援に飛んできました」  まだあやしんでいるようすの学生たちに、 「で、その、偶然、彼女を見かけて。オフィーリアでしょ」  オフィーリアを指さしたとたん、 「あっ! ジョージ(、、、、)!」  再度さっと名刺に目をとおすと、女学生が跳びあがらんばかりに歓声をあげた。
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