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洗濯機は洗面所のコンセントに愛を囁く。
「僕達は運命の二人だ」
何故なら、この家に来てから十年間、洗濯機の電源プラグは洗面所のコンセントから抜けたことが無かったから。ドライヤーや電動歯ブラシの充電器と違い、一度も抜かれたことが無い。そしてなにより二人のサイズは全く同じ。ピッタリと収まる。だから運命の二人だと確信していた。
「僕達は運命の二人だ」
その日も変わらず彼はコンセントに愛を囁いた。一方、リビングではこの家に住む十歳の娘が母親に訴えかけていた。
「ママ、洗面所のコンセントが全部使われているわ。電動歯ブラシに電気カミソリ、それに高圧洗浄機で埋まっているの。私は一体何処からドライヤーの電源を取ればいいの?」
「洗濯機の電源プラグを抜いていいわよ。今日は動かさないから」
その日、洗濯機は世界の真実を知った。
同じ頃、トイレではウォシュレット付きの便座が、台所では冷蔵庫が、それぞれコンセントに愛を囁いていた。
「僕達は運命の二人だ」
その会話を聞きながら、携帯充電器はいつも思う。俺の運命の相手は世界中至るところにいることになるな、と。
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