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「自覚ないんかい!……つか、あんた今年の有給全然使ってないでしょ?だから休みな。社員に適切な日数の有給を取らせないと会社的にも不味いの。言っとくけど、これは人事からの命令だからね!」
人差し指を突きつけピシャリと言った友人はあかねと同期であるが、人事部に属する社員なので、こう言われると逆らえない。
「あ、はい、ワカリマシタ……でも、まだ仕事がたっっっくさん残ってるんだよー」
パッと思いつくだけで近々に片付けねばならない仕事が両手の指でも足りないほどに溜まっているのを思い出しあかねは悲鳴をあげる。
「仕事って……でも、それあかねの仕事じゃなくて上司や同僚に押し付けられたヤツでしょ?いいわよ、あたしが連中に言っておいてあげる。『部下に有給をきちんと取らせないとあなたたちの査定に響きますよ』って。自分の仕事くらい自分らで片付けなさいっての、まったく」
友人はため息を吐きながら、仕事に熱意はないクセに出世欲だけは人一倍強いあかねの先輩や上司には堪える殺し文句を口にした。
「な、なら、休んじゃおうかな?」
「休みな、休みな。そうしてもらわないと人事が困るからさ」
そう言ってウィンクした友人の尽力で、あかねは有給を利用し長野にあるというペンションへ赴くことになったわけである。
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