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「斉藤あかね様ですね?遠路お越しいただき、ありがとうございます。ぼくはペンションの従業員『白猫』と申します」
ペンションのほど近くにある駅から出たあかねを丁寧なお辞儀をしながら迎えてくれたのは、20代の半ばほどと思しき銀髪の美青年であった。
「あ、は、はい!」
青年の言葉にあかねは驚いたように上擦った返事をする。
(何このイケメン!?従業員ってことは、彼デミヒューマンなの!?)
デミヒューマンは基本的に男性、女性型を問わず凡庸な容姿をしている。それが良くも悪くも1番人の感情を乱さない、当たり障りない姿だからである。
もちろん、オーナーの趣味で様々な容姿にすることは出来るし、あかねも過去に何回かモデルのような素晴らしい姿をしたデミヒューマンを見かけたことはある。
(だけど、こんなに)
美しいデミヒューマンを見るのは初めてである。顔の造形、体のバランス、全て均整がとれており、もはやAIのボディというより一個の芸術品のようだ、とあかねは思った。
「どうかされましたか?」
ジッと見つめてくるあかねを不思議に思ったのか白猫が訊ねてきた。
「あ、いや、その」一瞬あかねは何と言ったものか迷ったが、相手がAIであることを思い出し口を開く。「あなたがずいぶん綺麗な顔をしているもので、つい」
良い意味でもあるいは逆の場合でも、他人の容姿に関する話題はタブー視される世の中だ。しかし、相手がAIならそうした気遣いは不用である。だからあかねはその話題を口にしたわけだ。
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