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「ああ」なるほど、という顔で白猫が頷く。どうやら言われ慣れていることのようだ。「これはぼくの開発者の方がオーダーメイドで設えてくれたボディなのですよ。いささか目立つ姿ですが……気に入っています」
言って白猫は照れくさそうに笑った。
(ずいぶん人間らしいな。最新の第六世代のAIを積んでるのかな?)
一般にAIは20年以上前に発表された第四世代から感情や学習面が人間に大きく近づき、昨年発表された第六世代からは人間以上に豊かな感情を持つようになった、と言われている。だから、あかねは自然な感情表現をする白猫を最新型ではないか、と考えたわけである。
「……お荷物は以上でよろしかったでしょうか、斉藤様?」
あかねがそんなことを考えている間に白猫は手早く、彼女のキャリーケースを、彼が乗ってきたワンボックスカーに積み込んでいた。
「ああ、うん、そう。それだけ……ありがとうね」
あかねが礼を言うと、白猫は優雅な笑みを浮かべ頷いた。礼を受け取らぬわけでもなく、かと言って大袈裟に喜ぶわけでもないスマートな振る舞いに、あかねは一流のコンシェルジュに世話されているような錯覚を覚えた。
(すごく気遣いができてるなぁ。やっぱり第六世代のAIってすごい!)
感心しながらあかねはワンボックスカーの二列目、肘掛けなどを備えた、いわゆるキャプテンシートに腰を下ろすと程なく車は動き出した。
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