0人が本棚に入れています
本棚に追加
「でも、予約では食事は今日の夜からしか申し込んでないよね。いいの?」
仮に追加料金がかかったとしても、今食事ができるなら有難いというのがあかねの本音であるが、飛び込みで食事を頼んで用意ができるものか疑問に思ったのだ。
「ええ、食材は少し余分に用意しておりますのでご心配に及びません」
「それならお願いしようかな?」
「かしこまりました。それではご用意できましたら内線をいたしますので、それまでお待ちください」
にっこり微笑みながら白猫は頭を下げると、貴族を思わせる優雅な仕草で去って行った。
「うわー、なんだか至れり尽くせりだなぁ」
呟きながらあかねはベッドにダイブすると両の足をバタバタさせた。まるでお姫様になったような気分になったからだ。
わけもなく、これから楽しいことが起きそうな予感がして、やけに胸が高鳴った。
白猫の作った昼食に舌鼓を打ち、すっかり満足したあかねは今、ペンションのラウンジにあるふかふかのソファへ腰を下ろし一息ついているところだった。
部屋の隅にある暖炉の中でパチパチ音を立てる薪の音に耳を傾けながら持ってきた文庫本のページを繰る。暖かな部屋で、久しぶりの読書をゆっくりあかねが楽しんでいる、と。
「斉藤様、お飲み物は如何ですか?」
最初のコメントを投稿しよう!