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「お帰りい」
入室してから二時間ほど経過していた。
シンさんはこのホテルのオーナーと仲が良くて、『募る話があるから二人でちゃっちゃとやってきなさい』と、私たちにキーを渡して管理人室に籠っていた。
「あらあら。思っていたよりも早いわねえ」
シンさんは管理人室から出てきた後、私たちを舐めまわすように見た。
「ふうん。そっか。よかったわねえ」
それ以上言わなかった。
簡単な化粧直ししか持参していない私の顔は、泣き腫らしたせいでパンパンだし、セットした髪の毛だって、シャワーに入った後の簡単なアレンジ。
マサヒロさんは、そんな私を隠すように一歩前に立ち、私の手を握って支えてくれている。
当たり前になった恋人つなぎで。
シンさんから見れば、ヤったことは明白だろう。
「この後どうしよっか。私の店で飲み直すのもアリだけど、若者に戻った気分で朝までカラオケってのもいいわねえ」
「私、朝までカラオケってやったことないです」
「あら、そうなの。じゃあ、時間の許す限りとことんやりましょうよ。いいわね、マサヒロ」
ピンク色のハイヒールが似合うシンさんの流し目にドキッとした。
「はい、僕もそういうのやってみたいな。年代合うかな」
「バカね、本物の友情と愛情ってのは、合わせなくとも、受け入れてくれるものよ。あんたたち、今まで損ばっかりしてきたのねえ……ってツユリ、あんたさあ、これぐらいで欲情するなんてレベル低いわよ。女子力を磨きなさい、女子力を」
「はいっ」
状況が変わっても、ありのままの私たちを受け入れてくれるシンさんの存在が嬉しかった。
ーENDー
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