『はっぴいえんど』で出会った二人 ~人妻と中年童貞~

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 シンさんとマサヒロさんの動きが一瞬止まり、元に戻る。  「あら、そう」  「相手は夫なんですけど、夫は、今まで五人以上経験があるらしくて。夫は医者ですから、モテないはずがないと思っていたんですけど、なんかモヤモヤしちゃって。息子もカワイイし、これ以上の幸せはないとわかっているのに、どうしても他の人とのセックスを想像してしまうんです。女子会では、赤裸々な話題で盛り上がります。私は本当のことを話しているのに、そんな人はいない、隠しているって責められるんです。どうしたらいいと思いますか」  私は残りのウイスキーを飲み干した。許容範囲を超えたアルコールは、自分でもわかるぐらい理性を失わせていた。  「なあんだ。じゃあ、ヤりましょうよお。ここにチ〇ポが二本。経験人数三人に増えるわよお。ねえねえマサヒロさん、セックスしてあげましょうよ」  私は恐る恐るマサヒロさんの顔を見た。ノリノリのシンさんとは違い、マサヒロさんは困った顔をしていた。  (やっぱり、人妻がそんなこと言うと引くよね)  「僕もぶちまけちゃっていいですか」  「ええ、もちろん」  今度はマサヒロさんの番。マサヒロさんの残りのウイスキーを一気に飲み干す。  「お恥ずかしながら、僕、この年で童貞なんです」  「あっ、あら、そう。ふーん」  シンさんは一口だけ飲んでグラスを持ったまま左斜め上を見た。何か策を練っているように見えた。  シンさんは、突然、鼻歌で今人気の曲を歌いながら、カウンターに置きっぱなしだったスマホを持ち上げ、親指を軽快に動かす。  「フンフーン。これでよしっと。あんたたち、今からラブホに行くから準備しなさい。いいところ予約できたわよお」  ニヤリと笑うシンさんに、私たちの意見は一致した。  「「えっ、いや、あのう、そういうわけじゃっ」」  「じゃあ、なんなのよ」  言い返すことのできない私たちに、シンさんはため息をついた。
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