現世界・人外編【恋と故意】

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「ここであってるの……かな?」  私、巳里(みさと)はとある悩みを持って、とあるお店に来た。  学校で噂のタバコ屋さん兼お悩み相談所。  その名も『幸せ本舗・ハッピーエンド』。  なんでもどんなジャンルでも相談できる。  最後まで付き合ってくれて、それは大体納得できる内容で解決する。  納得できない場合でも、その後のアフターフォローまでしてくれるそうだ。  お代は高くはなかったので学生の私でも頼りやすい。  けれど、もちろん依頼を出した全員を引き受けてくれるわけではない。  まずは相談事を記したお手紙を出さなければならない。  そして相談所に向かえるのは、依頼を受任してもらえる可能性のある人だけ。   相談所に着くには、お手紙のお返事である案内状が必要なのだ  そしてこの道のりが怪しさ大爆発だった。  大通りから脇道に入って、ビルの隙間を通って、小さいトンネルを区切り、どなたかの家の庭を横切って、電柱の間を通る。  階段を登って屋根の隙間を通ったら、本当にたどり着いてしまった。  まさかまさか。本心でまさかだった。  だって。だってよ?  こんな怪しい道案内で、どうしてこんな店にたどり着くと思うの?  というか、この道案内もこうしてたどり着くまで適当だと思ってたのよ?  なんか変な魔法陣でも描いちゃったんじゃないの?  ……いやいや。魔法なんてこの世にあるわけないじゃない。  変な道を通ったせいか、変な思考回路が出来上がってしまった。  私たち獣人は体の特徴こそさまざまだけど、特別な力なんてない。  あるのは獣の部分だけ。  引き継いだ力だけ。  私だったら眼球の表面に薄い膜のような鱗があるとか。  一応ある手足は退化していて不器用だとか。  そんな程度。  御伽噺では能力を持つ獣人もいるけど、私は会ったことがない。  だから信じてない。  いたらいいなとは思うけど、所詮は作りモノだろうと思う。  それは置いといて。  タバコ屋さんと併設の相談所は、人通りのない所にでかでかと看板を掲げている。  店員さんらしき人はいない。  ()は。  お店は猿の置物に囲まれている。  狸ならわかるけど、何で猿?  招いている猿って初めて見た。  美味しそうに何かを頬張っている猿も目に入って……。 「うぅ、お腹減った……」  最近、ご飯減らしてたからなぁ。  それなのにこんなに歩いてきたらそりゃあ……ね。  素直に自主練しておけばよかった。  大会も近いのに……このままじゃ……。  ……ううん。  せっかくたどり着いたんだもの。  そうよ、私はここに着たくてきたんだから、到着したなら喜ばなきゃ!  すっごく怪しいけれど!  何あの猿。一、二、三匹が不気味に笑ってる。  ……なんか、入るの嫌だなあ。
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