26人が本棚に入れています
本棚に追加
「ここであってるの……かな?」
私、巳里はとある悩みを持って、とあるお店に来た。
学校で噂のタバコ屋さん兼お悩み相談所。
その名も『幸せ本舗・ハッピーエンド』。
なんでもどんなジャンルでも相談できる。
最後まで付き合ってくれて、それは大体納得できる内容で解決する。
納得できない場合でも、その後のアフターフォローまでしてくれるそうだ。
お代は高くはなかったので学生の私でも頼りやすい。
けれど、もちろん依頼を出した全員を引き受けてくれるわけではない。
まずは相談事を記したお手紙を出さなければならない。
そして相談所に向かえるのは、依頼を受任してもらえる可能性のある人だけ。
相談所に着くには、お手紙のお返事である案内状が必要なのだ
そしてこの道のりが怪しさ大爆発だった。
大通りから脇道に入って、ビルの隙間を通って、小さいトンネルを区切り、どなたかの家の庭を横切って、電柱の間を通る。
階段を登って屋根の隙間を通ったら、本当にたどり着いてしまった。
まさかまさか。本心でまさかだった。
だって。だってよ?
こんな怪しい道案内で、どうしてこんな店にたどり着くと思うの?
というか、この道案内もこうしてたどり着くまで適当だと思ってたのよ?
なんか変な魔法陣でも描いちゃったんじゃないの?
……いやいや。魔法なんてこの世にあるわけないじゃない。
変な道を通ったせいか、変な思考回路が出来上がってしまった。
私たち獣人は体の特徴こそさまざまだけど、特別な力なんてない。
あるのは獣の部分だけ。
引き継いだ力だけ。
私だったら眼球の表面に薄い膜のような鱗があるとか。
一応ある手足は退化していて不器用だとか。
そんな程度。
御伽噺では能力を持つ獣人もいるけど、私は会ったことがない。
だから信じてない。
いたらいいなとは思うけど、所詮は作りモノだろうと思う。
それは置いといて。
タバコ屋さんと併設の相談所は、人通りのない所にでかでかと看板を掲げている。
店員さんらしき人はいない。
人は。
お店は猿の置物に囲まれている。
狸ならわかるけど、何で猿?
招いている猿って初めて見た。
美味しそうに何かを頬張っている猿も目に入って……。
「うぅ、お腹減った……」
最近、ご飯減らしてたからなぁ。
それなのにこんなに歩いてきたらそりゃあ……ね。
素直に自主練しておけばよかった。
大会も近いのに……このままじゃ……。
……ううん。
せっかくたどり着いたんだもの。
そうよ、私はここに着たくてきたんだから、到着したなら喜ばなきゃ!
すっごく怪しいけれど!
何あの猿。一、二、三匹が不気味に笑ってる。
……なんか、入るの嫌だなあ。
最初のコメントを投稿しよう!