9人が本棚に入れています
本棚に追加
啓介の相槌に、たれ目の目尻を一層下げて微笑む葉月を見、諒もつられて笑う。
そして葉月の言葉の言葉を受けて、入学式当日の蒼矢を思い出していた。
…入学式に親が出席しないなんて、なんか悲しいなぁと思ったけど…、こういう年上の人やエイト先輩や、あの幼馴染の彼が身近に居てくれてるなら、髙城は俺が想像するほどの寂しい思いはしてないのかもしれないな…
啓介が着衣を整えたところで、蒼矢が部屋へ戻ってくる。
テーピングが施された右腕を動かし、啓介は葉月へ驚きの表情と共に頬を上気させた。
「…すごいっす、さっきまで右肩すげぇ重かったのに…! ありがとうございます!」
「お役に立てて良かったよ。明日病院行くまでは、なるべく安静にね」
「はい、お世話になりました!」
「おにぎりご馳走様でした」
帰宅する3人を、葉月は玄関先まで見送る。
そして会釈する去り際、後ろから微笑んだ。
「…大学で良い友達に巡り合えたみたいだね、蒼矢」
「!」
声を掛けられた蒼矢は、目を見張りながら振り返る。
「入学までひとりで手続き大変だったみたいだから、少し心配してたんだよ。でも、元気に通ってるようで安心した。…仲良くね」
「…はい」
そう優しく声掛けされ、つられて振り向いたふたりの友人からの視線も浴び、蒼矢は気恥ずかしそうに頷いた。
踵を返して薄闇に消えていく彼らを、葉月は見えなくなるまで見守った。
最初のコメントを投稿しよう!