第7話_笑顔の圧力

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「そしたら、思わぬハプニングで具合悪くなっちまったってわけ」 「"思わぬ"、じゃありません。コンタクトは苦手だって前々から言ってたのに…」 「晴れの日くらい眼鏡外してけっていう、俺の優しい親心だよ。式の間くらいなら大丈夫だと思ったんだけどなー、結局保険の眼鏡持ってくの忘れちまうし。しっかりしてる風で結構うっかり者なんだよ、こいつ」 影斗(エイト)はそう悪びれもしない態度で言ってのけ、(リョウ)啓介(ケイスケ)へけたけたと笑って明かしながら、またしても蒼矢(ソウヤ)の肩に腕を絡ませる。 そんな彼を蒼矢はじろりと睨みあげ、腕を振りほどいて居住まいを正し、テーブルをパンパンと叩いた。 「――とにかく、ちゃんと謝って下さい、ふたりに」 「! あぁ、そうだな。…悪かったな、式当日の予定狂わせちまって。あと、蒼矢送ってくれてありがとな」 「…! いえ…そんな。俺たち全然気にしてませんから」 「そうっすよ! かえって奢って貰っちゃったりして、申し訳ないですっ」 慌てた風に首と手を振りながらとりなしてみせるふたりを見、影斗は満足そうに頷き返した。 「許してくれるってよ、こいつら。これで丸く収まった感じ?」 「気を遣って貰ってるんです、見れば判るでしょう。今回のことで色んな方面に迷惑が掛かってしまったんですから、もう少し反省して下さい」 「あと烈くらいだろ? あいつには、次行くツーリング費用全額俺持ちにするってことで話ついてるぜ」 「また金銭で解決してるし…さほど誠意が感じられないんですが」 「あるって、誠意! 身銭切ってるんだからさー…機嫌治せよ、蒼矢。あとお前だけなんだって」 腕を組みながらそっぽを向く蒼矢の顔を覗き込む影斗を見、悪戯をした大型犬が主人の顔色を覗って尻尾を振っているような光景と錯覚し、向かいに座るふたりは目を白黒させていた。 …そっか。この間誘ってくれた時も含めて、なんとなくこの先輩に対してつんけんしてるなと思ったけど。 …髙城、機嫌が悪かったのか…
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