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やりとりを見守っていた同級生たちも、次第に緊張を解いていった。
「俺も腹立ったよ、さすがに。理学部を馬鹿にしてる発言だったよな!」
「本当に素で言ってるんだとしたら、きっと一生解り合えないな。あれが陽キャっていう人種なら、僕別に隠キャって思われてもいいや」
「しかし、言いたい放題言っていきやがったな。誰か塩持ってないか、塩!! 廊下に撒いてやれ!!」
「スティックシュガーならあるけど…」
「阿呆、構内に蟻集らせたいのか!?」
いつも通り、否それ以上の活気を取り戻していく理学部生たちを眺めつつ、蒼矢は諒と啓介へ視線を送る。
「…今更遅いかもしれないけど、やっぱり新聞の回収とWEBページの非公開を、是枝さんにお願いしてみようと思う」
「うん、何もしないよりはきっと良いよ。事態の収拾も早くなるんじゃないかな」
「交渉に行くの不安だったら、俺もついてくぞ」
「いや…ひとりで大丈夫だよ。気持ちだけ受け取っとく」
…決まり文句でも遠慮でもなく、本当に髙城はひとりで交渉に行くことに不安が無いのかもしれないな…
懲りもせず息巻く啓介へそう苦笑してみせる蒼矢を見、そう心の内で感想をまとめると、諒は彼の肩に手を置いた。
「腹減ったな。…ますますラーメン食べたい気分になってきた」
「!」
「…まだ行く気にならない?」
「…ううん、やっぱり行こうかな」
改めての誘いに、少しはにかみながら応じる蒼矢の表情に、諒も安心したように微笑み返した。
そして、少し湧き立つ室内へ向けて声をあげる。
「――思わぬ足止め喰らったけど、行くかね、中華屋」
「! おう、待たされた分、俺の胃袋は仕上がってるぞ! さっきから空腹期収縮が止められないっ」
「このやり場のない憤りを麺に、炒飯に、餃子にぶつけるっ!」
トラブルを経て今までより一層固い結束が出来上がった理学部生たちは、中華屋へ向けて一斉に荷物をまとめ始めた。
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