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第13話_見守る眼差し
結局、先程の講義室にいた者ほとんどで中華屋へ繰り出した理学部生一行は、丁度夕方のピークが過ぎた頃合いに入店したため全員が店内へ入ることが出来、瞬く間に店中の座席を埋め尽くした。
飢えていた男子大学生たちは、触れ込み通りの豊富な品揃えと色とりどりの一品料理に歓喜しながら口々にオーダーしていき、運ばれてくる焼飯やら定食やらに舌鼓を打つ。
蒼矢や諒たちも、テーブル席でシェアした餃子をつまみながらラーメンをすする。
ふと諒は、対面に座っていた啓介の様子に目を止めた。
「あまり進んで無いな、沖本。腹減ってたんじゃなかったっけ?」
「…! あぁ、減ってる減ってる」
「口に合わなかった?」
「いや、美味いよ。川崎が気になってた通り、期待以上」
諒の問い掛けに明るくそう答えた啓介は、箸を動かして数本の麺を口に運ぶが、すぐに手を落として丼の縁に休める。
「…?」
「…やー、なんか今日は色々あって疲れちまって。箸持ち上げるのもひと苦労ってな」
眉をひそめる諒へ、そう啓介は困り笑顔を浮かべてみせた。
「どこか具合悪いでも――」
「沖本、腕痛めたんじゃないか?」
そう言いかけた隣から、同じように啓介の挙動に注視していた蒼矢が口を挟んだ。
虚を突かれた諒は、ぎくりとした面持ちを浮かべる啓介を認めてから、蒼矢へ振り向く。
「さっき、あのサークルの人に押し倒されてたろ。右肩から落ちたの、見てたから」
神妙な面差しからじっと見つめてくる蒼矢の視線に耐え切れなくなり、啓介は眉を下げながら息を吐き出す。
そして箸を置くと、しかめ面を浮かべながら右腕を少しだけ上げ下げしてみせた。
「…ぶっちゃけると、倒された後からずっと痛くて…これ以上上げられないんだ」
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