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「打撲? 捻挫?」
「かなぁ。脚ならこんなんしょっちゅうあったけど、腕は初めてだなー…」
「病院行った方がいいかもね。接骨院か、整形外科かな」
腕時計を見つつ、諒はスマホで近隣の医療機関を探してみる。
が、どこも診療時間を過ぎていて、救急指定の大病院にでも駆け込まなければ診てもらえそうになかった。
「…どこも閉まってるな」
「だよなー。判断誤ったよ、ラーメンに目が眩んだばっかりに…」
…沖本には明日まで我慢してもらうしかないかな。このまま放置して大丈夫なものなのか…
テーブルに諦めムードが漂い始めた時、諒の隣でやはりスマホを弄っていた蒼矢が口を開く。
「病院は無理でも、応急処置を頼める宛があるんだけど、行ってみないか?」
「応急処置?」
「お世話になってる人が武道の師範してて、沖本の話したら連れて来てって言ってくれてる」
「武道の師範…!?」
「成程。そういう人なら、普段から何かあった時に生徒さんの捻挫の処置とかテーピングとかしてそうだね」
ふたりの反応を確認すると、蒼矢は再びスマホ画面へ目を落とす。
「今夜は予定何も入ってないから、今からでも大丈夫だって。最寄りはこの間送って貰ったI駅だけど、沖本の帰り方向だし、駅からも遠くないよ」
「行く行く! 助かるよ、明日病院行くにしてもこのままじゃ不安過ぎる」
「俺もついていっていいかな」
「! 川崎は逆方向だし、遅くなるかもしれないぞ?」
「平気だよ。ちょっと見学させてもらいたいんだ」
そう話がまとまると、3人は他のテーブル席やカウンターに座る同級生たちへ告げて先に会計を済ませ、中華屋を後にした。
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