第13話_見守る眼差し

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背後の(リョウ)から密かにそんな疑惑を持たれる中、どことなく浮世離れした雰囲気をかもす葉月(ハヅキ)は、これまたレトロモダンな木製調度品が揃えられた客間へ通し、啓介(ケイスケ)をソファへ座らせた。 「さてと。どこを痛めたのかな?」 「右肩から上腕にかけてくらいっす」 「服は脱げるかな?」 「はいっ」 促された啓介は上衣を脱ぎ、身体をひねる度に顔を歪める彼を、諒は気遣いながら介助してやる。 「――ああ、少し腫れちゃってるね。熱も持ってるなぁ」 葉月が腕の具合や可動を軽く確認し始めると、タイミング良く蒼矢(ソウヤ)が客間へ現れ、氷のうを手渡す。 氷のうを患部に当てだしたところで、黙っていられなくなった諒は、葉月へおずおずと問い掛ける。 「…あの…、楠瀬(クスノセ)さんが宮司さんで、武道の先生なんですか?」 「! うん、一応肩書はそんな感じだよ。蒼矢から聞いてなかった?」 「あ、いえ…伺ってはいたんですけど…思ったよりすごく若くて、驚いちゃって」 「ああ、それ言うなら俺もだわ。勝手に白髪で眉毛と髭が長めのしわくちゃ爺様想像してた」 ふたりの率直なコメントに、葉月は思わず手を止めてしまい、次いで可笑しそうに笑いだした。 「確かに、宮司も武道師範も一般的には歳いってるイメージが強いかもね。そのどっちもってなったら、もはやおじいちゃんになっちゃうよね!」 「すみません…」 「いやいや、いいんだよ。実際、僕はどっちもひよっこだから。この神社は3年前くらいに父から継いだばかりで、武道教室を始めたのもその頃なんだ」 「なるほど…!」 「でも、武道は子供の頃からやってるし、捻挫の応急手当ても僕の師範からきちんと教えを頂いてるから、大丈夫だよ。安心して」 浮かんだ笑い涙を拭うと、葉月は蒼矢に氷のうを渡して交代する。 「しばらく冷やして、落ち着いてきたらテーピングしようね」 葉月はにこやかにそう言うと、客間から出ていった。
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